熱中症を軽く見ず早い段階での処置を
こういった後遺症を防ぐためには、熱中症が軽度なうちに、できるだけ早く適切な処置を受けることが重要だ。
「熱中症は重症度によってI~III度の3段階に分かれ、対応が早いほど身体へのダメージも抑えられます。もっとも軽いI度ではめまいや手足のしびれなどが現れますが、可能であればこの段階で受診し、点滴などの処置を受けるとよいでしょう。II度以上になると、自分では対処しきれない状態となります」
熱中症重症度《分類》「症状」
《I度》「めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返りなど筋肉の硬直」
《II度》「頭痛、吐き気、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下」
《III度》「意識障害、痙攣発作(呼びかけや刺激への反応がおかしい、身体にひきつけがある)」
昭和大学が行った『熱中症による中枢神経後遺症』の研究結果によると、もっとも重い「III度」の熱中症の患者1441人のうち、死亡もせず、中枢神経に後遺症も残らなかった例は286人のみ。わずか19.8%だった。
「特に高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくくなっているため、異変に気づいたときにはすでにII度、III度の状態であることも少なくありません」
熱中症を防ぐため、猛暑日に外出を控えるのはもちろんだが、自宅にいても油断はできない。消防庁の調査では、熱中症の発生場所でもっとも多いのは「自宅」。その次に多いのが、歩道などを含む「道路」。次に、競技場や野外コンサート会場、屋外駐車場などの「公衆(屋外)」であった。このため、特に高齢者がいる家庭では、
●部屋の温度計が28度を超えたら、暑さを感じなくともエアコンをつける
●1時間おきにコップ1杯の水分をとる
など、熱中症予防のためのルールをあらかじめ決めておくとよいだろう。
熱中症にならないための予防はもちろんだが、いざなってしまったときの対応も知っておきたい。熱中症の初期症状の多くはめまいや立ちくらみなどで、この時点で一刻も早い応急処置が求められる。
「身体の冷却と、水分補給。この2つがとても重要です。熱中症が進行すると身体に力が入らなくなり、脱水症状によって全身に激しい痛みが起こります。このような症状の悪化を防ぐためにも、救急車を待つ間に涼しい場所に移動したり、水分や塩分を補給したりとなんらかのアクションを起こしましょう」
熱中症時の水分補給には注意点もある。
「あまり知られていませんが、牛乳やアミノ酸入り飲料には体温の上昇を招く作用があります。熱中症の症状があるときには摂取を控えましょう。スポーツドリンクでも、アミノ酸が入っていないものなら大丈夫です。また、経口補水液は脱水症に即効性があります。万が一に備えて用意しておくとよいでしょう」
気象庁の1か月予報によると、9月も広い範囲で厳しい暑さが続く見込み。熱中症は年齢を問わず誰もが発症する可能性があることを、改めて肝に銘じて残暑を迎えたい。