この先どう生きたいか考えておくことが大事
広汎子宮全摘術のあと、幸いにも抗がん剤や放射線治療は必要がなかった。その後12年間は、定期的に受診し、再発することなく過ごしている。
「10年もたつと違うがんが発生する場合もありますし、5年たって寛解と言われ、安心して検査に行かなくなる人もいます。だから私個人としては、簡単に寛解という言葉は使いたくありません」
2人に1人ががんになる時代。とはいえ、まだまだがん検診に行かない人も多い。
「がんは早期発見が大事というのは確かです。そのために年代問わず、がん検診は必須。私はたまたまステージ1で見つかったからラッキーだったかもしれない。
でも毎年検診を受けても見つからない場合や、早期発見が難しいがんがあるのも事実。予防のためにも食事や運動で身体を整えて、ストレスの少ない生活を送ることをおすすめします」
現在は、緩和ケア医として多くのがん患者さんの声に耳を傾け、常に心で寄り添う。そして「もっと『患者力』を持ってほしい」と訴えている。
「患者力とは、医師任せではなく、患者自身で病気のことを調べて理解して、進む道を決断できる力のこと。いざ病気になると何も決められない人がいます。自分の人生ですから、『先生にお任せします』ではなく、自分がどうしたいかで選択していいんです」
病気は突然やってくるもの。病気を宣告されたときに不安にならない人はいない。だからこそ大事なのは、万が一に備えた心の準備だ。
「がんに限らず、自分がいつどんな病気になるかなんてわかりません。例えば食事が口からとれなくなったときにどうするか、延命治療を望むのかなど、最低限の希望を家族と話し合っておくと安心です。これは家族のためにも大事。
ご自身だけでなく、高齢のご家族がいれば、元気なうちに話してみてください。人生の後半をどう生きたいのか、ちゃんとイメージすることが悔いなく生きることにつながると思います」
(取材・文/釼持陽子)