一刻も早く元の身体になるために、激痛を我慢して病院近くのショッピングモールまで歩き続けた。

「美しくなるためにお化粧をするとか、おしゃれをするとか、それは女性にとってすごくパワーになるんですよね。

 震える手でメイクして、背中を丸めて30分くらいかけて着替えました。ショーウインドーに映る自分の姿が、がん患者には見えないように明るく見せたかったんです」

 回復を信じてがんと闘い続けた浜木さん。少しずつ、その努力が報われ元の生活に戻っていく。その中で、精神的な変化も感じていた。

がんになってよかったなんて思わないけれど、なったことでさまざまな気づきがありました。ごはんが食べられたり、車の運転ができたり、人と話したり、普通に生活ができることのありがたさを改めて思い知りました。

 何より人の優しさがすごく心に響いた。当たり前と感じていた一つひとつにきちんと感謝できる人間になれた気がします」

 手術から7年後、友人の推薦で美魔女コンテストに参加。ファイナリストとして選ばれた際に、自身ががんサバイバーであることを公表した。

「自分が胃がん経験者だっていうことは隠していたんです。入院も周りには胃潰瘍の手術だって説明していたくらい。コンテストで発表したことでネットニュースや雑誌に取り上げてもらって、反響をたくさんいただきました」

美魔女コンテストのステージに立つ浜木さん。ここで初めて人前でがんのことを告白した
美魔女コンテストのステージに立つ浜木さん。ここで初めて人前でがんのことを告白した

 決して自分から日常を発信するタイプではなかったという浜木さん。コンテストをきっかけに、自分が発信していくことで誰かの勇気につながってほしいと考えるようになった。

 現在も“ポジティブ美魔女”として活躍し、インスタグラムには美味しそうな食事や笑顔の写真、トレーニングしている姿など前向きな投稿が並んでいる。

「よく誤解されるのですが、あの投稿の食事量を実際に私が全部食べられているわけではありません。でも、がんが判明して落ち込んでいたときに、鬱状態だった私は携帯で“胃がん術後 胃全摘その後胃がん食事”みたいなキーワードをひたすら検索していました。

 そうすると、寛解後の食事の様子を綴ったブログと出会って、胃を切除しても食べられるんだ!とすごく勇気づけられたんです。だから私も全摘はしたけど何も諦めていないよ、と。

 食事も美容も、全部楽しんでいるよと、メッセージを送りたかった。食事の投稿と笑顔の投稿だけにしようって決めたんです」

インスタグラムに投稿された、美味しそうなトンカツ
インスタグラムに投稿された、美味しそうなトンカツ