駒澤大の藤田監督が明かしていた不安要素
史上初、2年連続の大学駅伝三冠に王手をかけていた駒澤大。今季の出雲と全日本は全区間でトップを走り続けてきた。和田さんは、大会前に駒澤大の藤田敦史監督と話す機会があったそう。
「藤田監督は“仕上がりもオーダーも完璧。唯一、不安要素があるとすれば、今季は相手の背中を見て走ったことが一度もないこと”と言っていました。つまり、追いかけるレースを経験したことがなく、箱根で初めて直面してしまいました。そうなると、駒澤の選手たちは(青学大との)タイム差を縮めるために突っ込んだ走りをするしかなく、後半にかけきつくなっていくレースをせざるをえなかった。逆に青学大の選手は突っ込む必要がなく、自分のペースで悠々と走れたわけです」
先頭を走るメリットはこれだけではない。
「中継車が風よけになるため走りやすく、自分の顔と走りが全国のお茶の間に流され、実に気分よく走れるわけです! 特に青学大は先頭を走ると、もう手がつけられないほど強いですからね」
とどめを刺したのが山下り。6区スタート時点で両校の差は2分38秒。
「復路の最重要区間になるだろうと思っていました。青学大・野村昭夢選手(3年)が区間2位の快走に対し、駒澤大・帰山侑大選手(2年)は区間12位。完全に勝負がつきました」
城西大3位はまったく意外じゃない
3位には城西大。過去最高順位に選手たちは大喜び。今大会のダークホースとなった。
「今季は出雲3位、全日本5位。調子がいいという話は聞いていました。同大を率いる櫛部静二監督は、早稲田大学時代の箱根駅伝で天国と地獄を味わっています。箱根駅伝を知り尽くす人が、時間をかけていいチームに仕上げてきた。そんな印象です。だから、陸上に詳しい人たちに言わせれば、3位は意外でも何でもないんです。今後は、上位常連校の仲間入りをしそうです」
中でも5区で区間新記録を樹立し、金栗四三杯(MVP)に輝いた“山の妖精”山本唯翔選手(4年)の存在は大きい。
「やはり箱根駅伝は山の区間のアドバンテージが高い。5区に頼れる選手が控えていると、1区から4区までの選手は萎縮せずに走れる。たとえ失敗しても5区で取り返してくれるという安心感から、しっかり波に乗った感じですね。ただ僕としては、青学大優勝の立役者という意味で、太田蒼生選手にも金栗四三杯をあげてほしかったなと思います」