病み上がりに再感染…『感染症ドミノ』の恐ろしさ

 ところで、このような感染症への罹患には、『免疫負債』が悪影響を及ぼすこともあるという。免疫負債とは、社会的な接触の機会が減少した結果、感染症全般に対する免疫が欠如している状態のことで、新型コロナウイルスの流行後、特に懸念されている事柄だ。

「新型コロナウイルスのパンデミック中は徹底した予防策や行動制限が取られたため、特に子どもたちは一般的な感染症に対する免疫システムを育てる機会が持てなかったという事情があります」(五藤院長)

 免疫負債は、将来的に感染症の増加を引き起こすリスクがあるという。

子どもたちは厳重な対策で新型コロナから守られていたが、それが「免疫負債」につながっている!?(※画像はイメージです)
子どもたちは厳重な対策で新型コロナから守られていたが、それが「免疫負債」につながっている!?(※画像はイメージです)
【写真】免疫力アップに適した食材とは

「’22年にコロナ第7波が起きたころはコロナ以外のウイルスが駆逐されていたのですが、それが落ちついた’23年9月ごろにインフルエンザが大流行しました。これは’23年5月に新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されたことで通常の社会生活が戻り、マスクをつけなくなって一気に病原菌にさらされるようになったことで、免疫負債の問題が直撃したと考えられます」(五藤院長)

 国立感染症研究所が発表する「感染症発生動向調査週報」によると、今年の第16週(4月15日〜21日)は、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較して、「RSウイルス感染症」「咽頭結膜熱」「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」の定点あたり報告数が「かなり多い」、手足口病が「やや多い」となっている。

 加えて、感染症に繰り返し罹患する『感染症ドミノ』という状態に陥る危険性もある。

「保育園や学校で集団生活を行う子どもは、短期間で複数の感染症にかかることがよくあります。親が子どもの看病疲れで寝不足だったりすると、移る場合も多いです。治っても病み上がりは免疫力が弱っているので、別の感染症にかかる可能性が高いのです。例えばコロナにかかって、治りかけた時にインフルエンザにかかってしまうケースもあります」(五藤院長)

 例えば新型コロナウイルスに繰り返しかかると、さらにリスクが高まるケースも。’22年に発表されたアメリカのVAセントルイス・ヘルスケアシステムによるコホート研究では、新型コロナウイルスに2回以上感染すると、1回感染した場合と比べて、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になると報告されている。

 普段から免疫力を高めて感染を防ぐことが重要なのだ。

免疫力アップのために毎日の食事を見直そう

 手洗い・うがいという基本的な感染対策に加え、免疫力を上げるためにできることは何だろうか。五藤院長は第一に「バランスのいい食事」だという。

「野菜や果物、全粒穀物(精白していない穀物)、良質なタンパク質をバランスよく組み合わせた食事を心がけてください。特に、緑黄色野菜や果物に含まれるビタミンC、魚介類などに含まれるビタミンD、牡蠣や牛赤身肉などに含まれる亜鉛は免疫力向上に役立つ栄養素なので、意識的に摂取しましょう。また、食生活で全てを補う事が出来なさそうな場合にはビタミン剤などのサプリメントで補充することも効果的です。ただサプリメントにはカロリーが想像以上に含まれていたり、含有成分に注意が必要なものもあるので注意が必要です」(五藤院長)