荒木 健康や美しさって、数値ではないと思うんです。義母が亡くなる前、認知症で糖尿病もあって、施設で出される食事がとても味気なかったんですね。今だから言えますけど、最後のほうは私、義母に大好物のお寿司やフライドチキンを食べさせてあげたんです。とても喜んでくれました。
あと、紅をさしたいと言うので、口紅を塗ってあげたり、あとは耳にピアスシールを貼ってあげたり。鏡を見せてあげたら、もう自分だとはわからなくなっていたので「きれい!誰?」ですって。そのときの義母はとても楽しそうだったし、きれいでした。
高澤 医師の私が言うのもなんですが、健康のために食べ物を制限したりすることは、あくまで長く幸せに過ごすための手段のひとつであって、本当はそのほかの選択肢もいっぱいあるんですよね。荒木さんはまさにそれをされたわけですね。
荒木 ありがとうございます。でも、健康や美容というキーワードには、ちょっと気になるお年頃ではあります(笑)。
せっかくなのでプロである先生にお伺いしたいのですけれども、以前、有名なコーディネーターの方に「由美子さん、私もう洗顔はしないの。蒸しタオルで押さえて、拭き取るだけよ」と言われて私も始めたんですが、これってどうなんでしょう?
高澤 洗顔より血行がよくなるので、よいと思いますよ。でも摩擦は皮膚にとってあまりよくないので、その際はこすらないようにしてくださいね。
荒木 ありがとうございます!これからも続けます。あともうひとつ。先生がお考えになる、若さと健康のために心がけたほうがよいことって、どんなことでしょうか。
高澤 「表情」と「声」ではないでしょうか。表情が豊かだと、どんな年齢の方でも元気に見えますよね。また、声も大事です。喉の衰えは、みなさんが思っている以上に老化とつながっています。いわば、「表情」と「声」に意識を向けるようにすれば、若さや健康、美につながるのだと思います。
ですから、荒木さんのように、自分の喜怒哀楽を大切にされて、しゃべったり食事をする時間を大切にすることは、とても理にかなっていると思いますよ。
荒木 そう言っていただけて、とてもうれしいです。プロであるお医者様のご意見を上手に取り入れて、この先の人生も楽しみたいと思います。
対談していただいたのは……
荒木由美子さん●1960年生まれ、佐賀県出身。アイドル、歌手、女優として活躍。23歳のとき13歳年上の歌手・湯原昌幸さんとの結婚を機に芸能界を引退するも、直後から同居の義母の介護生活に突入。子育てと並行の20年を経て、2004年に芸能界復帰。現在は、テレビ、ラジオの司会やコメンテーター、介護や家族にまつわる講演などを行っている。
高澤博和先生●1979年生まれ、奈良県出身。京都大学理学部を卒業後、改めて医学部で学んで外科医に。多くのがん患者を診療する。大学病院勤務を経て、美容外科専門となる。2017年に自由診療専門の「プライム銀座クリニック」を開院。高い技術力が評判で、患者の悩みに多様なアプローチ方法を紹介、解決に導いている。また、中国・北京にも分院を持ち、両国を行き来する多忙な日々を送っている。
東京都中央区銀座5丁目14-5 光澤堂GINZAビル2F〔https://prime-ginza.jp/〕
取材・文/木原みぎわ