死んだことを誰にも気づかれないわびしさ
逆に、ひっそりと亡くなり、発見まで時間を要した事案も。
「70代後半の姉妹のおふたり暮らしの一軒家でした。資産家の老姉妹で、住まいが立派な邸宅ゆえに外からは異変に気づきづらかったと思いますが、一歩中に入ると例に漏れず足の踏み場がないほどゴミであふれた状態。そんななか、おふたりとも寝室で亡くなっていました」
死後1か月以上。かなり腐敗し、生前の姿はわからないほど。約10年ぶりにこの家を訪れたという依頼者の弟さんはもちろん、誰からも亡くなったことに気づいてもらえず、ゴミに囲まれて朽ち果てたことは残念でしかない。
「遺品の整理を進めると、家じゅうのあちこちから現金の束が出てきました。ゴミに紛れて散在していたので、一緒に捨ててしまってもおかしくないほど。お金に不自由はしていなかったものの、部屋を片付ける気力も体力もなく、周囲からも完全に孤立していたのだろうと」
さらに、1年以上もの間、放置されていたケースも。そこには大量のハエの死骸とカラカラに乾いた遺体があった。
「時間がたちすぎるとニオイもかなり薄れるんです。生の痕跡がなくなるというか。早く見つけてもらいたかっただろうと思います」
遺体が放置された現場で不憫さを感じなかったことは一度もないと言い切る山村さん。
「冷蔵庫の中に“このあと食べようと思っていたんだろうな”と思える料理がそのまま残っていることも少なくありません。ある日突然、それまでの日常が途絶えるだけでもつらいのに、そのまま気づかれず、故人の意思なく処理されていくのは悲しすぎます」