依存症患者への正しい接し方とは
山下 依存症は「家族の病気」ともいわれています。アルコール依存の当事者がいれば、家族は「飲むな」と言いたくなる。ですが、その伝え方だと逆効果になる。家族も巻き込まれてしまうのが依存症という病気です。
家族の方から「どう接したらいいのでしょうか?」と相談される機会が多々あったので、今回、一冊にまとめました。僕の本について振っていただいたので(笑)、益田先生の本にも触れさせてください。どれも興味深いお話でしたが、なかでも子どもに関するうつの指摘は目からウロコでした。
益田 ある調査によると、3歳から17歳の3.2%がうつ病を患っているというデータがあります。3%ということは、30人のクラスに1人はいるということになる。子どもも、大人と同じようにうつになるということを伝えたかったんですね。例えば、学校へ行けなくなったのは、ペットの死をきっかけにうつ状態になったから、などの可能性もあるという。
山下 心の病や依存症と向き合うとき、情報を集めることは確かに重要ですが、やはり医師に相談してほしいですよね。依存症の場合は特に、です。「通院していることが会社にバレたら」などと悩まれる方もいるのですが、悩むのは“相談後”にしてほしい。
というのも、依存症治療は、「どうやるとうまくいく」ではなく、「どうやるとうまくいかないか」を知ることが重要だからです。恋愛にもいえることですが、どうするとモテるかは人それぞれですが、どうすると嫌われるかは一定の統計があります。「どうやるとうまくいかないか」を理解しないと再発してしまう。
益田 まずは「精神の病気も存在する」ということを理解しないといけませんよね。そのうえで、今度は脳のメカニズムを理解すれば快方に向かう。いや、理解できなくていいんです。理解したフリをすればいい。そしてとにかく、専門医のアドバイスを実践する、と。
山下 そのとおりです。「Fake it till you make it」(できるふりをしよう。それができるようになる日まで)という英語のフレーズがありますが、依存症でも「回復したフリ」から始めることはとても大切です。
ただ、そのためには、患者さんたちが素直に「信じてみよう」と思われる存在に、僕たちがならなければいけない。そういう意味では、事前に存在を知ってもらい、「この人に相談したい」と思わせる仕組みをつくっている益田先生のYouTubeの取り組みはとても勉強になります。
益田 YouTubeを活用すれば、僕の考え方や人間性もわかると思ったんですよね。事前に益田裕介を知っておいてもらえれば信頼されやすくなるだろうなという……ずるいっちゃずるいんですけど(笑)