腸内で発酵する発酵性食物繊維
「食物繊維は水溶性と不溶性の2つに分類されています。水溶性はその名のとおり、水に溶けやすい食物繊維。溶けると粘度が増すので便がやわらかくなり、スルリと出しやすくなります」
反対に水に溶けにくいのが不溶性食物繊維。
「不溶性食物繊維は腸内で水分を吸着して数倍に膨れるので、便のカサが増え腸のぜん動運動が促されます。ちなみに、不溶性と水溶性は、2:1の割合でとるのが理想的といわれています」
しかし近年、これらとは異なる観点から分類された食物繊維が注目を集めている。それが〈発酵性食物繊維〉。
「発酵性食物繊維とは、腸内で発酵する食物繊維のことをいいます。細菌による分解作用で人間に役立つものを発酵といいますが、発酵性食物繊維は分解されビフィズス菌など善玉菌のエサとなることで、これらの菌を増やします。要は、腸内環境を整えるのに大いに役立つのです」
さらにすごいのは、腸内細菌によって発酵される過程で健康に有用な成分が作り出されること。
「短鎖脂肪酸というもので、腸だけでなく身体中で働いて、健康にいい影響を及ぼしていることが近年わかってきました」
どんな効果が期待できるのだろうか?
「短鎖脂肪酸が豊富にあると腸内が弱酸性に保たれるので、有害な菌が増えにくくなります。善玉菌の発育を促進し、ぜん動運動を促すので、便秘や下痢などの不調が改善。さらに過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎といった、治療が難しい腸の病気の改善にも役立つことがわかっています」
腸粘膜に隙間ができ、毒素や細菌、未消化の食物が血中に漏れ出す〈腸漏れ〉も近年、アレルギー疾患や倦怠感などを招く一因として知られるようになった。この改善にも短鎖脂肪酸は有効。なぜなら腸粘膜を構成する細胞のエネルギー源となり、その結合を強化してくれるからだ。
「短鎖脂肪酸は血流にのって全身に運ばれるので、身体全体にもよい影響を与えます。例えば、血糖値を一定に保つホルモンであるインスリンの分泌を調整したり、血管の柔軟性を高めて動脈硬化や高血圧を予防改善したり、炎症を抑える物質を作ったり。
免疫力を調整する〈制御性T細胞〉も短鎖脂肪酸によって活性化。免疫反応が過剰になって起こるアトピー性皮膚炎やぜんそくの改善にも役立ちます」
そう聞くと、がぜん気になるのは発酵性食物繊維が含まれる食品。
「腸内細菌のエサになりやすく発酵性が高いのは水溶性食物繊維で、ペクチン、アルギン酸など主に7つの種類があります。右表はそれらが多く含まれる食物です」