オネエ口調が受け、起死回生の大ヒットに
2度の大きな別れを経験し、うつ状態から立ち直ってから、“最後の本”を出そうとしたことがあった。
「『死別』をテーマに1冊分の原稿を書いたのですが、紆余曲折あり、それを出版することは叶いませんでした。これを最後に書くのはやめようと思っていたのですが、書きためていた小さなネタはまだまだたくさんあったんです」
自分自身にアドバイスをするように、そして患者さんと日々向き合う中で浮かんだ言葉のメモはたくさんあった。同時期に精神科医つながりの友人である高木希奈先生に誘われ、Twitterの医師クラスターのオフ会に参加したことをきっかけに、書籍の宣伝にしか使っていなかったTwitterアカウントの本格運用を始めた。
「書きためたネタを短文調で、オネエ口調でつぶやき始めたら、これがすごく伸びて。半年くらいでフォロワーが10万人に増えました。そのころに編集の斎藤さんからダイレクトメッセージで出版のお話をいただき、『1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』を出版することになりました」
高木先生は、当時のTomy先生についてこう語る。
「Tomy先生は当初、140字で何が伝わるのかと懐疑的だったのですが、フォロワーが増えるうち、楽しまれるようになっていました。いちばんバズった名言は、一緒に食事したときに話した内容をつぶやいたものと記憶しています」(高木先生)
本書を担当したダイヤモンド社編集の斎藤順さんも、その時期にTomy先生の名言に出合っている。
「私自身がとてもストレスがたまっている状態でTwitterを見ていたら、Tomy先生のポストがぱっと目に飛び込んできました。それで先生のアカウントをたどったら名言だらけだったんです。これはもう絶対他の人に知ってほしいと、その場で企画書を書き上げて、お仕事の依頼を送りました」(斎藤さん)
その言葉は冒頭でも引用した『ストレスを減らすたった一つの方法、それは“手放す”こと』だったという。言葉の選定にはどのような基準があったのだろうか。
「お寿司屋さんと一緒で素材をそのまま生かし、人気の高い投稿から出していきました。先生のフォロワーは女性が多かったので、私がいいと感じた言葉よりも、フォロワーの皆さんの評価を素直に反映して作ったのが『1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』です」(斎藤さん)
この“1秒シリーズ”は30万部を超えるベストセラーになったことはすでにお伝えしたとおりだ。また、『50代を後悔せず生きる言葉』といった“年代シリーズ”も刊行しており、こちらも幅広い世代の読者の心を支えている。