3年後に転移・再発、がんが消えない…
その後、仕事に復帰して再び日常を取り戻したころ、がんが転移、再発。手術から3年がたったころだった。
「肺と縦隔リンパ、鎖骨付近に転移していることがわかりました。1回目の抗がん剤治療のとき、胃がムカムカして食欲が落ちたり、腰に痛みが出たりしたものの、副作用はその程度で済み、比較的軽かったんです。想像よりスムーズだったので、治療すればすぐまた元どおりの生活に戻れると、完全に楽観視していましたね」
そんな友永さんの予想は大きく外れてしまう。
「抗がん剤を投与しても前回のような効果が出なかったり、副作用で免疫細胞が減ってしまうため1週間、投与を延期したり薬を減らしたりして、調整が必要になりました。スケジュールどおりに投与できないので、当然消えるべきがん細胞も小さくならない。それどころか、がんが大きく広がっていきました」
再発後の治療でいちばんつらかったのが、薬の副作用で起こる手足のしびれ。得意としていた篠笛という横笛を奏でるときも、満足のいくパフォーマンスができなくなってしまう。
「指がしびれて麻痺してしまい、思いどおりに動かない。笛を吹くとき、穴を触っている感覚がなくて、音が出なくて外してしまうんです。自宅で笛の穴の部分に印を付けてガイドを作り、本番に向けて何度も練習しました。足の指もしびれで感覚がなくなり、赤ちゃんのようなよちよち歩きしかできない。肺への転移の影響で、咳が止まらなくなるときもあり、歌うことも難しくなっていきました」
細胞の増殖が速く、悪性度が高いといわれた友永さんの乳がん。再発後、複数の部位に転移し、身体をむしばんでいく─。それでも娘と二人三脚でアーティスト活動を続けてきた友永さんだったが、昨年10月、腸壁に穴があく消化管穿孔を発症。救急搬送され、小腸を約15センチ切除する緊急手術となった。