「人は持てる量が決まっていて、抱え込んでいるものを手放せば、そこに空間ができて新しいものが入ってくると私は信じています」
実家で暮らすことは考えられなかった
結婚生活を手放し、引き換えに得るものもあるはずだと、前向きなハナ子さん。
「法テラスに相談すると、一緒に暮らす次女の養育費が請求できるというんです。まずは娘と暮らす、当面の生活費は得られることがわかりました」
ハナ子さんは離婚間際、部屋探しを始めた。
「物件はどれも暗い雰囲気でした。仕事の達成感と幸福感に包まれた日に内覧をした部屋だけが、良い部屋でした」

ただ、離婚をするときは次から次へと問題が出てくるので、やはり離婚前に当座の生活費は算段しておいたほうがいいと話す。
「私は養育費でどうにかなりましたが、それまで使っていたクレジットカードは、夫が本会員になっている家族カードでした。でも、離婚して家族会員から外れれば、当然、使えなくなってしまいます。私の手元に残ったのは、たった1枚の私名義の百貨店のクレジットカードだけでした」
ハナ子さんが手放したものは結婚生活だけではない。「実家の売却」も経験している。
「離婚して2年ほどたったころ、私は認知症の母を見守るために実家に戻りました。父と母には心から笑えるようになってほしいと思っていました。しかし母はその数年後亡くなり、父も長期入院から高齢者施設へ移り、昨年見送りました。ひとりになったとき、ずっと実家で暮らすことは考えられなかったんです」
家の中は不要なものであふれていたという。建物も築30年以上、冬には雪下ろしも欠かせない家で、自分が高齢になったときを考えると住みづらかった。
「売却も引っ越しも、なかなかスムーズにはいきませんでした。移住先である東京での働き口は決まっていなかったので不動産会社に頼んでも『無職?うーん』という感じで、貸してもらえる物件がなかなか見つからず……」
なんとか実家は売却。それで得たお金のおかげで、URから希望どおりの物件を見つけることができた。