世界中の女性をきれいにしたい

 KAWABE LABは今年で23年目。20代から80代まで、いろんな女性たちが、サチコさんのスタイリングとアドバイスを求めてサロンにやってくる。

「最初のころは理解できなかった普通の女性と、ひとりひとり向きあって仕事をしているうちに、女性たちがどんな生活をして、どんなことに悩んでいるのか、少しずつ勉強していったんです。お客さまに育てていただきましたね。軌道に乗せるまでに20年かかったかなぁ」

 最近はシニア雑誌にモデルとしても登場。身をもって、年を重ねたなりのおしゃれを発信している。

「人間は必ず年をとる。それをネガティブにとらえたら、もったいないじゃない。今を楽しまないとね。……って言葉でいうのは簡単だけど、自分なりの楽しみ方を見つけるのは本当に難しい。私もいろいろ失敗もしながら年をとって、若い子の服が着られなくなったから、今のような仕事ができているのよ。人生は本当に無駄がないわよね」

 さまざまな経験を経てたどりついた、普通の人を自信を持った美しいオトナの女性にするという仕事を、今後も誇りを持って続けたいという。

「周りからは、“よくこんな地味ぃな仕事をやっているな”ってさんざん言われたわよ。だけど、私の人生なのだから、私自身が決めればいいことだし。女性たちにパワーを与えられるのは、私しかいないと、今は自信を持って言える。これからの目標? “世界中の女性をきれいにする!”ってことかな」

 80年生きたパワーが美しく輝く。川邉サチコさんは、今日も自由で新しい。

(取材・文/伊藤愛子 撮影/森田晃博)

伊藤愛子◎人物取材を中心に活動するフリーライター。著作に『ダウンタウンの理由。』『40代からの「私」の生き方』など。俳優・大杉漣さんの生きざまを描いた『現場者300の顔をもつ男』(文春文庫)の取材、構成を担当。理系出身ながら、今もガラケーを愛用している。