その雰囲気を色で言えば、“オレンジ”
先日、偶然にも、日本の訪問看護の草分けである秋山正子さんと話をする機会を持った。そのときに、スコットランド生まれのマギー・ケズウィック・ジェンクスさんの発案で英国に誕生した、がんとともに生きる人々を支える「マギーズキャンサーケアリングセンター」が日本にあることを知る。
このマギーズセンターは、単なるがんの相談所でもなければセカンドオピニオンを出すところでもない。がんの患者さんだけでなく、その周りの人の悩みや心に寄り添うためにつくられた機関だ。2016年10月にオープンした「マギーズ東京」のセンター長が秋山正子さんである。
豊洲市場にほど近い運河沿いの場所に、マギーズセンターはポツンとあった。まるで北欧の別荘のように、自然を感じられる庭に開放的な室内が見える。雰囲気を色で言えば、オレンジ。やさしい温かな造りに、思わず吸い込まれそうになる。
「わあ、いい雰囲気。わたし、ここに住みたい!」病院でも自宅でもカフェでもない、いつでも誰でも来れる居場所だ。
ここには医療知識のある看護師、心理士やボランティアがいて、お茶を飲みながら友人のように話を聞いてくれたり、また、ひとりでくつろいでいたりできる。
マギーズらしさの一例は、ひとりで泣けるトイレがあること。病院ではないので、がんのパンフレットは、必要になったら手に取れる場所にそっと置いてあること。また、相談者のプライバシーを守るため、相談者同士の目線が合わないように部屋の造りが工夫されている。障子で仕切れる個室もある。ソファで寝転がっていてもいい。すべて自由。
今回、「マギーズ東京」を取り上げたのは、あまり一般には知られていないと思ったからだ。がんの患者を持つ家族、友人、会社の上司・同僚など、本人ががんでなくても利用できるところが素晴らしい。