インターネットで仕事がしたい
そのかいあって、早稲田大学商学部に見事合格。上京した1996年といえば、インターネットが急速に浸透し始めたころだ。
「ビットバレーとかネットベンチャーが立ち上がってきた時期で、僕もインターネットに熱中しました。奈良には戻らないつもりだったので、余計に自分で何かしないといけないと思った。勉強はそこそこにインターネットの会社でアルバイトをしました。時間があるうちにいろんな経験を積んでおきたかったんです」
就活は、ネットベンチャーから商社まで片っぱしから受けた。多くの内定をもらい選んだ企業はNTTデータ。
「ネットコミュニティーを作ったり、ネットベンチャーの会社と新しい事業を生み出していきました。ベンチャー企業に出資して、事業が大きくなったらシステムをNTTデータで作る、投資事業ですね」
事業に取り組むうちに、美容系総合ポータルサイト『@cosme』で知られる株式会社アイスタイルと関わることに。そのユニークな事業に惚れ込み、転職した。
松島さんは、WEB広告サービスの企画開発を担当後、サイト全体のサービスをプロデュースする仕事を担った。経営にも携わり、やりがいを感じていた。
当時、松島さんの部下だった小川友恵さん(37)が話す。
「松島さんは、部下が大声で文句を言っても、そのテンションに合わせてやりあってくれる。すごいと思ったのは、偉い人のご機嫌をとるのではなく、お客さまにとって最善の方法を選ぶところでした」
小川さんには、こんな思い出がある。松島さんと開発を一緒に担当していたころ、新サービス発表前夜になっても資料が完成せず、2人は大声で文句を言い合いながら資料を作成した。
明け方、ようやく資料が完成し、印刷にとりかかったのだが、何と用紙切れ。「備品管理がなっていない!」と腹を立てた松島さんは、当時会社の近所に住んでいた社長に早朝電話をかけ、用紙を持ってこさせたという。「最後の最後まで妥協をせず、納得できるまでやり抜く人」と小川さんは笑う。
松島さんは、お寺という特殊な環境が嫌で、普通の人生を生きたいと願い上京した。東京では、誰も自分がお寺の跡取りだなんて知らない。自分は何に興味があって、何をやろうとしているのかをしっかり見てくれる。その環境が心地よかった。