〈実例〉近所の開業医で回復せず
「一気に悪化して死にかけました」

病気の正体は劇症糖尿病! 桜木梅子さん (仮名・40代)】

 とにかく、疲れてはいたんです。主人が長い闘病生活を送っていて、その介護をしながら3人の子育て。毎日が目まぐるしいほど忙しい。自分で言うのは変ですが、手抜きができないまじめな性格なので、休む間もなく動いていました。

 ただ、健康には自信があったんです。料理も好きでバランスよく食べていたし、体力もあるほう。マッサージに行ったり、早く寝るなどしてなんとか乗り切れていました。だから、疲れがひどい、熱があると感じたあの日も、風邪と疲労だと思っていました。いつもかかる近所の内科で風邪薬をもらいましたが、寝てもいっこうに回復しない。微熱が下がらず、だるさも取れず、そのうち吐き気もしてきました。

 もう1度診てもらいましたが、原因はわからずじまい。その夜からです。一気に悪化し、ベッドからまるで起き上がれない。吐くものもないのに吐き気は止まらず苦しくてしかたない。ちょうど姉から様子見の電話がかかってきたときは、話すのも難しい状態でした。

 驚いた姉は「それ、おかしい! 大きな病気かも」と駆けつけてくれ、すぐにタクシーに私を乗せて中規模の病院に駆け込んだのです。そのときの私は秒を追って悪化していて、タクシーの中では意識を失いかけていました。

 すぐに血液検査をしたら、血糖値が400! 危険な状態と判断され、即入院。ほぼ1週間寝たきりで、その間の記憶もさだかではありません。

 診断された病名は、劇症1型糖尿病 (※)。膵臓からいっさいインスリンが分泌されなくなり一生、注射が必要と宣告されました。

「ほんとに危なかったですよ」と、死の危険もあったとわかったときは、幸運だったとは思いましたが、完治しないという事実はやはりショックでした。

 1型糖尿病は原因不明なのに、生活習慣が原因の2型糖尿病と混同されてしまう……。不摂生の結果と思われてしまうのが、ほんとうにつらいです。姑にいやみを言われるのも悔しくて悔しくて……。

 初診で、すぐに病気が判明していたら……と思うこともありますが、結果は同じだったかもしれない。それは誰にもわかりません。でも、疲れやだるさをあなどってはいけない、自分の体力を過信してはいけないと痛感しました。

 これが学びとなり、主治医は自分で納得できる先生を探し出しました。一生、付き合うわけですから。今は信頼できる医師と、進歩してきた治療法で、安心して生活ができています。

〈※1型糖尿病〉
自己免疫の暴走によって膵臓でのインスリン分泌ができなくなる病気。生活習慣が原因である2型糖尿病とは違い、原因は不明。生涯にわたり、インスリン注入が必要である。