治療しなくてもいい「がんもどき」で治療死
「がんは放っておくと転移が生じて人の命を奪うと考えられていました。しかし、検診をしても死亡数が減らないことから、がんにはタチのいいものと悪いものがあり、それぞれ運命が決まっていると考えられます」
ここでの転移は臓器の転移であり、リンパへの転移は含めない。その理由は、
「リンパ転移は放置しても死なないし、リンパ節は臓器に転移するのを防ぐ関所になっているという考え方もあります。
がんでタチの悪いものを“本物のがん”とするならば、タチのいいものは“がんもどき”といっていいでしょう。どちらも検診ではひとくくりにがんと診断されますが、その性質は異なります」
事故死や不審死をした人を解剖すると、がんが見つかることがある。これは“がんもどき”が潜在がんとして共存していたからだという。
「PSA検査がなかった1975年は、前立腺がんによる死亡は全男性死因のわずか0・3%でした。潜在がんは放っておいても転移しないし人を殺さない、ニセモノのがんなのです」
しかし、がんもどきを検診で見つけ出し、治療を行うことで死亡することがあるという。
「抗がん剤は薬ではなく“毒”。検診で見つかったがんもどきにも、抗がん剤が使われますが、その副作用はひどいものです」
抗がん剤治療を受けると、元気な人でも心臓、肺、骨髄、腎臓などの機能が低下して、急死する例も多い。先ほどあげた多くの芸能人も抗がん剤で急死している。
「がん治療中に多臓器不全で急死するのは、抗がん剤による毒性死です。一方、がんの転移によって亡くなる人は、穏やかな過程をたどり、自然に枯れて老衰のように亡くなります」
また、がんの手術による死亡もあるという。
「中村勘三郎さんは人間ドックで小さな食道がんが見つかり、食道を全摘し胃袋を胸まで引っぱり上げる手術を行った。そのため小腸の消化液が喉まで逆流、誤嚥し呼吸不全のため亡くなりました。あきらかに治療死です。食道がんに限らず、胸やお腹の手術では感染症や出血による合併症でたくさんの患者さんが亡くなっています」