低温調理はプロでも難しい
島田氏がプロデュースするほかのラーメン店にも、“同じチャーシューを出しているの?”などの電話が寄せられたという。
低温調理によるレアチャーシューは、鶏に限らずラーメンにおけるトレンドの1つ。低温調理自体も流行中だ。
「一般家庭にも広まっていますが、前提として低温調理は“プロでも難しい”ということを、調理人もそれを食べる消費者も自覚するべきです。ラーメン店に限らず、ほかの飲食店でも、“これちゃんと火が通ってないな”という料理が出てくることがあります」(ラーメン店店主、以下同)
加熱する時間は温度によって変わるが、60〜70度ほどの“低温”でじっくり加熱する調理。これにより、高熱で加熱するより、中心部がレア状態でしっとりした口当たりとなる。
「素材となる肉は、どれだけ食肉業者が形やサイズを整えたとしても個体差がある。それによって加熱時間などは変わってくる。低温調理がいくら科学的に安全だという根拠のある調理法であっても、個体差などを見極める職人的な“目”も必要になります」
“マニュアル”で管理しているラーメン店もあるが、それだけでは難しい部分がある。
「もちろん数字というきちんとした“基準”も必要。うちの店でも低温調理を行っていますが、必ず中心部を温度計で計測してから提供しています。マニュアルを盲信して、専門知識のないアルバイトなどが調理している店は、非常に怖いですね。マニュアルにも当然、温度や加熱時間は定めているはずですが、それはあくまでただの“基本”となります。個体差があれば、それに応じて調整しなければいけません」