私が、この病気を持っている意味
すでに全身傷だらけなのに、心まで傷つけられたら……。
そう思うとつらすぎると思うが、彼女は、「あ、『かわいそう』はやめてくださいね(笑)。そりゃあ大変だけど、私はかわいそうじゃないですよ」と、笑みを浮かべつつ毅然と言い切った。それが彼女なりの流儀のようだ。
そういえば、動画の中でも、「痛い」「つらい」といった泣き言めいた発言もほとんどない。
「言っても意味がないし、かわいそうと思われたくないから、口にしないことにしています。ただでさえそう思われがちな体なので、せめて明るくありたいな、と」
つくづく、強い女性なのだ。しかし、なぜ、そんなに強くいられるのか──?
「いやいや〜! 私だって、健康な人が羨ましくて、病気がものすごく恨めしかった時期もありますよ。さんざん傷つけられて、落ち込んだこともありますしね。だからこそ、『負けたくない』『強くなりたい』って、すごく気を張っていたときも。そう思いすぎたせいで、躁鬱病と診断されたこともあるくらいです。だからいまは、ある意味諦めています。っていうのも、気を張っていたころは病気に勝とうとしてたんですよね。でも、治らないんです、この病気。だから病気と戦わずにうまく付き合って行くことにしました。それで『どうしようもない、諦めよう』って(笑)」
と、どこか悟ったような表情で話す。
「一生、つきあっていくしかない。だから今は、いい意味で『病気と向き合いすぎない』ことが大切だなって思っています。たとえば、環境を変える。自分がつらくない状況に身を置く。あと、痛みや不安に気持ちを持っていかれすぎないようにする。病気があっても自分にできること、やりたいことに目を向ければ、この人生も悪くないかなと思えるはずです」
「表皮水疱症」という病気があること、その患者のリアルな実態を、1人でも多くの人に知ってほしい。これによって、自分と同じ病気を患っている人たちが少しでも楽に、自分がずっと感じていたような生きづらさから解放されるのであれば──。そう思って始めたYouTubeだった。
現在、こむぎさんのチャンネル登録数は10万人超。その数と同時に、動画発信の意義も目的も、増えてきたと感じているという。
「いろんなコメントをもらうようになって、この病気だけじゃなく、ほかにも人から理解されないような難病と戦っていたり、病気じゃなくても、なにかを抱えて生きている人はすごく多いんだなと実感しました。そんないろんなことを抱えた人たちに向けて、私みたいな人もいるんだよ、これでも楽しく生きられているよっていうのを伝えたいと思っています。それで誰かが少しでも前向きになってくれたら……。私がこの病気を持っていることも、少しは意味があるのかなと思います(笑)」