いまや日本人の2人に1人ががんになる時代。友人知人にがん患者がいる人も少なくないだろうが、いざ自分や家族ががんと診断されたら、どこでどんな治療を受けるべきか大いに悩むことだろう。
多すぎるがん情報、何を信じるべきか
「がんが自分事になったとたん、情報を冷静に判断するのが難しくなります。生死に関わる事態になるほど、人は聞こえのいい言葉や甘い言葉に引き寄せられてしまうものです」と話すのは大場大医師だ。
大場先生は大学病院やがん専門病院で主に消化器領域がんの豊富な治療経験を積み、現在は独立して外科医・腫瘍内科医として臨床の最前線に立つ。そこで痛感するのが「もうできる治療法がない」と冷たく告げられ途方に暮れる、いわゆる「がん難民」と呼ばれる人の多さだという。
がん治療は外科的手術、化学療法(抗がん剤)、放射線治療を治療の3本柱とし、がんの進行程度や転移の有無などにより選択肢が変わるが、いくつかの治療を続けるうちに、医師から「もうあなたにできる治療はないからよそへ行くように」と言われてしまうことがある。
「患者さんが主治医を失う場合すらある、とても残酷な言葉です。がん治療の専門病院で治療を受けてきた患者さんでも、がん難民になる人は少なくありません」(大場先生、以下同)
がん難民を生むのは医療者側の責任も大きいという。
「余命○か月だから治療をしないと死んじゃうよとか、うちでの治療は卒業だからよそで緩和ケアを受けて、などと安易に言う医者がいます。エビデンス(科学的根拠)という物差しでしか患者さんを診ないうえに、コミュニケーション能力の低さも相まって患者さんの気持ちに寄り添えないのです」
できる治療はないと言われても、元気で過ごせているうちは必死で情報を集めたいのが患者というもの。そういうときほどニセモノにひっかかりやすいという。
「患者さん側のリテラシーも問われますが、何よりも最悪なのは、患者さんの心理につけ込んで金儲けをたくらむ医療者が相当数いることです」
インターネットで調べた情報をうのみにしないことも大事だと大場先生は言う。
「残念ながら、知りたい言葉でネット検索すると、上位に来る情報ほどニセモノである場合が多いのが現状です」冷静でいるのが厳しい状況でも、正確な情報を集める努力は惜しみたくない。次のページではがんの治療をめぐるウソ・ホントを解き明かしていく。