荒木 先生の場合、施術とともに、患者さんの悩みを聞いて、今後どうしたいかを一緒に考えるのもお仕事ですものね。

高澤 はい、患者さんのお話をしっかり聞いて、今はこういう対処法があって、私ならこういう方法で悩みを解消するアプローチができると、じっくりご説明して、決して無理強いせず、ご自身での決断を大切にしています。対話の時間が比較的長いため、施術は短時間で終わったと、びっくりされる患者さんがかなり多いですね。

荒木 対話はとても大事ですよね。先生は大変穏やかでいらっしゃるから、患者さんも安心なさるんですよ。私もね、人生の節目節目はすべて自分で決めてきましたけれども、言葉にすることを大切にしてきました。

 人への感謝の気持ちとか、ちょっと弱気になったときには主人に「ねえねえ、今、私のこと『きれいだよ』って言ってくれる?」ってお願いしたり(笑)。努力と根性も大切だけど、他の人からの具体的な言葉の力でも人は救われると思うんです。

タレントの荒木由美子さん(右)と、医師の高澤博和先生(左) 撮影/齋藤周造
タレントの荒木由美子さん(右)と、医師の高澤博和先生(左) 撮影/齋藤周造
【写真】人生を楽しむヒケツを考える対談をした高澤博和先生と荒木由美子さん

高澤 確かに私も言葉の大切さは日々実感しています。

荒木 そうなんですよね。私の人生も、人の言葉や態度で気づかされ、救われてきたことも多いんです。20年前に認知症の義母を看取って、芸能界へ復帰することを決めたのも、「由美子さんが送ってきた人生をそのまま伝えることが、これからの由美子さんの仕事なんです」と言ってくれた今の事務所の社長の言葉ですから。

 介護にまつわる講演会の仕事も多いのですけれども、会場には介護に直面中の方々もなんとか時間をつくって来てくださいます。そんな方々に話しかけられるたびに、「頑張れ!」といったハッパをかけるのではなく、「頑張ってるね」「えらいね」って今を認めてあげて、声をかけています。私がそれらの言葉に本当に救われたので。

高澤 ご自身の体験を、世の中のみなさんに還元しようとされているのが素晴らしいですね。私もクリニックのスタッフたちに、接客や対人間の思いやりの大切さを日々伝えていますが、荒木さんの姿勢は個人的にも見習いたいです

荒木 今は、20代30代の頑張った自分を認めてあげられるようになって、新しいことに素直に挑戦できるようになった、50代からの人生がとても楽しいんです。

高澤 私たちのクリニックにいらしてくださる方々も、ご自身の変化を楽しんでいらっしゃる50代以上の方が多いです。30代くらいまでは周囲の目を気にしたコンプレックスを解消されたいという方が多いのですが、50代以上の方は、施術を受けたことで生活にどんな変化が生まれるのか、楽しまれる方が多いですね。こういった患者さんにしても、荒木さんにしても、ここまで生きてきた今の自分を認めてあげる力は年齢を重ねた賜物でしょう。