スマホを見るために枕を高くしていると…

「日本人は高い枕の方が増えている印象です。特に、デスクワークで首が前屈みになる姿勢が癖になって枕が高くないと寝られない方や、スマホを見るために寝る直前まで枕を高くしてそのまま寝落ちするような方も多いようです」

 そう聞いて思わずドキッとした人も少なくないのでは。今まで、脳卒中などの対策として血圧や血液をサラサラにする食生活などに気を使っていた人は多いと思うが、これからは睡眠習慣も見直してもらえたら、と江頭先生。

寝ているときだけでなく現代人の生活習慣は非常に首に負担がかかる ※写真はイメージです
寝ているときだけでなく現代人の生活習慣は非常に首に負担がかかる ※写真はイメージです
【写真】突然死のリスクが高まる「殿様枕症候群」の由来は…

「ただ、今回の報道後に、“何十年も高い枕を使ってきたからもうダメだ”と悲観する声が届きました。長年の習慣でダメージは蓄積しているとは思いますが、その習慣を見直していけば、寝ている間に脳卒中を起こすといった最悪の事態を避けられます」

 さらに、病気や体質などで枕を高くしないと寝られない人は、枕の硬さを意識して。

「枕の硬さも肝心なので、高い枕であってもやわらかい枕を使えばリスクはだいぶ軽減されます。また、枕の肩側にタオルを畳んで敷けば、首の角度が緩和されて比較的安全になります。極端に高い枕だけはやめて、あとは実情に合った対策を工夫してみては」

 研究チームではこの疾患を「殿様枕症候群」と命名している。江戸時代に使われた高くて硬い殿様枕が由来だが、興味深いことに当時の複数の随筆に『寿命三寸楽四寸(12センチ程度の高い枕は髪型が崩れず楽だが9センチ程度が早死にしなくて済む)』との記載があり、昔の人が感覚的に高くて硬い枕は寿命を縮めると知っていたことに驚く。

 ちなみに椎骨動脈解離は、起きているときにも注意が必要だという。

「料理や農作業で長時間、首を前屈みにしていて呼ばれて振り返ったら発症したとか、飛行機や新幹線の移動中に窓にもたれて数時間寝てしまい、旅行先で痛くなってろれつが回らなくなったなど、首の屈曲からの回旋には要注意。寝違えたと思っていて血管が裂けていた人も。2週間ほどしても痛みがよくならない、普通の肩こりと違う、めまいがするなどの症状があれば病院を受診してほしいです」