「よく考えれば、僕がついたタレントさんはみんな胸が大きかったな。

 夏木マリさんは歌とグラビアの仕事がメイン、いしだあゆみさんは歌とドラマがメイン、朝丘雪路さんは歌もお芝居もバラエティも舞台もジャズダンスも人並み以上にできるマルチタレントだったんですよ。タレントさんごとに、それぞれの分野の人脈を築かせてもらったんですよね」

 そう語るのは、サンズエンタテインメントの会長・野田義治氏。高校卒業後に役者を志して上京し、劇団に所属しながらディスコでバンドのブッキングにも携わる。そんななか、夏木マリのマネジャーとして芸能界でのキャリアをスタートさせる。

 その後は渡辺プロダクション系「サンズ」の紹介でいしだあゆみ、津川雅彦の紹介で朝丘雪路の専属マネジャーに。そして黒澤久雄とともにイエローキャブを設立。堀江しのぶに始まり、細川ふみえ、かとうれいこ、雛形あきこ、山田まりや、MEGUMIなどの人気タレントを育ててきたことは知っている読者も多いことだろう。

 今回の『エンタメヒットの仕掛け人』では、そんな野田氏にマネジャーとヒットタレントのあり方について聞いた。

−—メディアはアナログからデジタルに移行しつつありますが、そのなかで芸能事務所としての舵取りは変わりましたか?

「メディアの潮流がアナログからデジタルになっただけで、芸能事務所の本質的なビジネスは昔と何も変わっていないと思う。人を育ててプロデュースするという我々の商流はこれからも変わらない。

 一般の企業と大きく違うのは、感情のない製品を作っているのではなく、人間という複雑な感情で動く生き物と仕事をしていることにあると思うよ」

——そんな人間を売れるタレントにする確実な方法ってあるんですか?

「もちろんそこに正解はないし、ヒットの方程式なんてないと思う。タレントを売り出すのに方程式があるんなら、こっちもすごく楽なんだけど、そういうわけにもいかない。エンタテインメントの世界でヒットを出すノウハウは、マネジャーにもないし、タレント本人にだってない。

 そして、番組をつくっている人たちにもないと思うんですよ。世間を相手に、情報発信していくということはそれだけ難しいことなんだろうね」