実践後すぐトイレに駆け込む人も!

 小林先生は1995年に順天堂大学医学部付属順天堂医院に日本初の便秘外来を開設。以来、2万人以上の便秘に悩む患者を診察してきた。

近年は腸活がブームとなっていますが、食物繊維やヨーグルトなど腸に良いものを意識して食べることに注目が集まりがちでした。食生活の見直しはもちろん大切ですが、経験上、それだけではお腹のトラブルはなかなか改善されません。

 特に慢性化した便秘となると、整腸薬や下剤を服用してもそう簡単にはよくならないのが現実です」

 そこで小林先生は効果が出やすく誰でも実践できて続けやすい腸活の方法を長年研究してきた。その結果、たどり着いたのが運動療法の知見を取り入れた〈30秒腸活〉だった。

加齢によって腸の機能が低下するのは事実ですが、実は運動によって身体の外側から腸を刺激することで、これを補うことができます。

 私は便秘外来で患者さんに直接、30秒腸活を含む運動療法を指導してきましたが、なんと95%の患者さんに症状の改善が見られました。中には長期間、便秘が続いていたのに、運動療法を実践したとたん、腸が動く音がして、トイレに駆け込んだ人もいるほどです」

 30秒腸活では、2つの運動を行う。

1)腸のあたりをマッサージしながら、3秒吸って6秒吐く呼吸を何度か繰り返す〈腸もみ呼吸法〉
2)腕を上に伸ばしたまま、上半身を左右と前に倒す〈全身のばし〉

 どちらも30秒程度を目安に、行うだけで効果が見られたため〈30秒腸活〉と命名された。それぞれの運動に期待できる効果は?

腸もみ呼吸法では深くゆっくりした呼吸を30秒間繰り返します。すると自律神経と関係の深い横隔膜がよく動くので、自律神経のバランスが整います。腸をマッサージしながら呼吸することもポイント。

 これで身体の内と外から腸を刺激できますから、腸の動きがよくなり、排便が促されるのです

 では全身のばしは?

猫背や腰の曲がりなど姿勢が悪いと、腸が押しつぶされて動きが妨げられたり、血流が悪くなって腸に酸素や栄養が届きにくくなったりします。そこで、背筋を伸ばして上体を倒す動きによって、姿勢を矯正。

 おなかまわりの筋肉の硬さも便秘の原因になりますが、全身のばしによって、肩や胸、お腹の筋肉もほぐれるので、腸の内容物を移動させるぜん動運動も促されます」

 要は30秒腸活を行えば、高齢者便秘の原因である自律神経の乱れや筋力の低下を予防改善できるということ。さらに、たまった便を押し出す効果もアリ。

便秘で便がたまりやすいのは、小腸と大腸をつなぐ入り口あたりと、3か所ある大腸の曲がっている部分。腸もみ呼吸法と全身のばしはこれらの箇所を外側から刺激しますから、便秘の改善に非常に効果的なのです」