エアー・プルダウン
「健康のために良かれと思って激しい運動をすると、かえって血糖値を上げる可能性があります。例えば毎朝のジョギング。暁現象といって夜間にインスリン拮抗ホルモンの分泌が増加することで、明け方に血糖値が上昇する作用があるんです。
目覚めると血糖値はさらに上昇するので、この状態でジョギングを行うと身体に負荷がかかりますし、脱水により血糖値が上がるリスクまであります。実際、50代の患者さんが毎朝30分ジョギングをしたところ、血糖値が50mg/dl以上上がってしまいました」(矢野先生、以下同)
そこでおすすめしたいのが、エアー・プルダウンだ。やり方は(1)椅子に腰かけた状態で肘を曲げ、手のひらを両耳の横に置く(2)両腕をY字のように左右に大きく広げるだけ。タオルを使って行うのも効果的だ。
「1セットは10回で、3セット行うのがよいでしょう。この運動は上半身の大きな筋肉である広背筋を鍛えることができ、血糖値を改善できます。さらに肩甲骨の間にあり、脂肪を燃焼し熱を産生する褐色脂肪細胞を刺激することで、ダイエット効果も期待できます。体重増加により悪化するコレステロール値のコントロールにもよいでしょう」
食後15分以内に15分間のウォーキング
かつては食後すぐ動き回ると消化に悪いという定説があったが、むしろそれはよいことだという。
「毎食後15分以内に15分間ウォーキングしたグループは、60日後にヘモグロビンA1cの値が1%近く下がったという報告があります。ただし食後30分以上たってから運動をしても、意味がないことがわかっています。
さらに朝食前の空腹時に45分間ウォーキングしたグループもヘモグロビンA1cの値は改善しなかったのです。食後すぐに身体を動かすことで、糖が効果的にエネルギー源として使われ、血糖値の急上昇が抑えられます。
糖尿病にとっては消化、つまり食後の糖の吸収はむしろ抑えたほうが良いのです。また洗い物や掃除などの家事によって、NEATといわれる非運動性熱産生が増えるので、糖尿病改善に効果的ということもわかっています。食後すぐに家事を行うのもよいでしょう」
